第14章 飛空艇 Ⅰ※※
翌日、目を覚ました一期一振は身支度を整えると、飛空艇の甲板へと出た。
早めに目覚めたと思っていたが、甲板には既にゼロが山姥切国広と手合わせをしていた。
「ゼロ様、おはようございます」
手合わせを邪魔しないよう、少し離れた所から声をかけると、ゼロは返事することなく、山姥切に斬りかかっていく。
それは山姥切も同じだった。
よく見れば彼女達は真剣で手合わせをしていた。
互いの刀がぶつかっては、刃が交差する。
見ているだけで、両者の気迫が伝わってくる。
なるほど、彼女は手合わせにすら容赦はないいようだ。
山姥切が後ろに跳んで間合いを空けようとするが、それを読んでいたかのように、ゼロが前へ勢い良く跳び、鋭く突いた。
「……っ!」
だが、ゼロの刃は山姥切の眼前でピタリと切っ先が止まる。
あの勢いで突いたにも関わらず、容易く寸止め出来るとは。
噂には聞いてはいたが、やはりゼロの剣戟は優れている。
ゼロは刀を引くと、鞘に納めた。
そして、ゆっくりと息を吐く。
「悪い、目を離すわけにいかなくてね」
「いえ、ゼロ様の手並み、お見事です」
「ありがとう。君とも楽しみだよ。久し振りに太刀とじっくり手合わせしたかったから」
一期一振がゼロに手巾を差し出すと、彼女は一期一振の手を掴んで引き寄せた。
「手合わせだけど、遠慮なく打ち込んであげるよ。じっくりと、ね。そういうプレイ、好きそうだよね君は」
「な……っ!?いえ、私は……」
顔を赤くして目を背ける一期一振に、ゼロは満足そうに微笑むと、手巾を受け取った。