第13章 鉄の処女
「二重人格とか……」
フォウを見下すように、ゼロは彼女に近寄ると、突き刺した刀の柄を握りしめた。
「そんな、都合のいい話がっ」
ゼロがフォウの体から勢いよく刀を抜くと、彼女の腹からはぼたぼたと血が落ち、フォウは凄まじい痛みに顔を歪めながら後ずさる。
苦しむフォウに冷めた眼差しを向けると、ゼロはフォウを斬りつけた。
「あるわけ……っ、ないだろうっ!!」
ゼロに容赦無く斬りつけられるフォウは、血を撒き散らしながら、体をよじらせる。
その姿は、舞を踊っているかのようだった。
「ぐ……ぁ、……」
そして、フォウが膝をついて崩れ落ちると、ついにフォウは息耐えた。
ゼロは愛刀を鞘に納めると、静かに息を吐く。
「…………」
フォウを倒したゼロは、彼女の亡骸を表情一つ変えずに見下ろしていた。
そんなゼロの横顔を、山姥切は複雑な気持ちで見ていた。
フォウはゼロより小柄で幼い顔立ちだったが、それでもゼロと似ていた。
自分によく似た妹を殺す理由が、一体どこにあるのだろう。
審神者の力を独り占めしたい。
それが、本当の理由なのだろうか。
答えの出ない問いが山姥切の心の中で何度も繰り返される。
そして、フォウの亡骸はファイブの時のように、黒煙があがる。
やがて煙となって消え去ると、血溜まりの中心に淡く光る指輪だけが残った。