第13章 鉄の処女
「あ……あぁ……そんな……っ」
ゼロとの戦いを避け、逃げ回っていたフォウが、ついにゼロに殺された。
その様子をただ見ていることしか出来なかった一期一振は、その場で力無く膝をつく。
「私も……殺してください」
その言葉を受け、ゼロは一期一振目掛けて刀を振り下ろした。
「……っ!?」
刀の切っ先がピタリと止まる。
一期一振を見下ろすゼロの表情の、なんと美しく、恐ろしいことか。
「審神者は殺す、刀剣男士は奪う……」
「だから……前も後ろもキレイに洗って、夜を待ってろ」
「……っ!前も、後ろも……!?」
ゼロは刀を鞘に納めると、愕然とした表情を浮かべる一期一振に背を向けた。
血溜まりの中心に手をのばし、そこにあった指輪を手に取る。
それは、一期一振の紋付鈴。
ゼロは指輪をじっと見つめるが、歌仙の時のように指にはめようとはしなかった。
ゼロは振り返ると、一期一振へ彼の紋付鈴を投げ渡す。
「一期一振……お前に、選ばせてやるよ」
「私が、選ぶ……?」
服従か、死か。
そのどちらかを選べというのか。
主であったフォウを殺され、このまま紋付鈴が誰の手にもわたらないままでいれば、一期一振の魂は刀へ還る。
それもいいかもしれない。
だが、一期一振の目の前で不敵に笑うゼロに、一期一振は心の奥底で何かが湧き上がる。
気付かぬうちに、一期一振はゼロをなかば陶酔したような目で見ていた。
第十三章 終