第2章 来栖 龍之介・壱
(まさかまた彼女と待ち合わせでもしてるのか…?)
そう不安を抱きながら泉の後をついて歩く。
彼女が足を止めたのは、やはり以前と同じ部屋の前で…
「……、」
中には予想通り先客がいた。
けれどその人物は瞳さんではなく、俺よりいくらか年下であろう女。
美女というより"可愛い"という形容詞の方が合っている。
「社長、紹介しますね。彼女…私の大学時代の後輩で"瑠璃子"と言います」
「は、はじめまして…今日はよろしくお願いします…!」
「……、」
よろしくも何も、一体俺に何をさせようと言うのか…
「とっても可愛いでしょう?瑠璃子はこう見えても最近結婚したばかりの新妻なんですよ」
「………」
物凄く嫌な予感がする…いや、むしろ嫌な予感しかしない。
そんな俺を見てクスリと笑った泉が耳元で囁いてきた。
「察しのいい社長ならもうお解りでしょう?今夜は瑠璃子の相手をしてあげて下さい」
「なっ…」
薄々そんな気はしていたが、改めて言われるとやはり驚きを隠せない。
さっき彼女は"新妻"だと言っていなかったか…?
そんな女を抱けと言うのか…
「彼女あまりセックスの経験が無くて…だから旦那様を喜ばせる為に色々勉強したいんですって」
「…は……?」
「返事は"はい"って何度教えたら解るんです?」
「ちょ、ちょっと待て…いくら何でもそんな事……」
「無茶な事を言っているのは重々承知ですが…そこを何とかお願いします!」
「いや、でも…」
「可愛い女の子がこんなにお願いしてるんですよ?それを無下にするんですか?」
「……、」
本気なのか…?
こんな純情そうな顔をして、旦那以外の男とヤるなんて…
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