第2章 来栖 龍之介・壱
泉のヤツ、まさかずっと隣の部屋にいたのか…?
今日"先約がある"と言っていたのは、賭けの行方を見守る為…?
「社長と瞳さんのやり取り…一部始終聞かせて頂きました」
「…!」
そう言う彼女の手にはイヤフォンが握られている。
「お、おまっ…盗聴してたのかよ!」
「まったく猿みたいに盛って…ホントどうしようもない人」
「っ…」
「そもそも私の許可なく瞳さんと会ってる時点で奴隷失格なんですけど」
「まぁまぁ百合香ちゃん、最終的にはあなたを選んでくれたんだからいいじゃない」
「もぅ…瞳さんもやり過ぎですよ?社長ったらイイ女を見るとホント見境ないんですから」
「………」
何だこの置いてきぼり感は…
俺に対し怒っている泉と、そんな彼女を和やかな顔で見ている瞳さん。
俺の頭はまだこの状況に追いついていない。
「とにかく…今から社長にはたっぷりお仕置きが必要ですね」
「…!」
「あら…それじゃあ邪魔者は消えようかしら」
そんな呑気な事を言って、瞳さんが俺の頬にキスをしてくる。
「来栖くんとのセックスとっても良かったわ…。今度は賭け無しで私と遊びましょう?」
「……、」
「百合香ちゃんもまた…。来栖くんには首輪でも着けておいた方がいいかもね」
「ええ…考えておきます」
恐ろしい事を言い残して部屋を出ていく瞳さん。
こちらへ向き直った泉は、ゴミでも見るような目で俺の事を見下ろしてくる。
「さぁ社長…躾の時間ですよ?」
「っ…」
*
「お、おい…このホテルって……」
それから3週間後…
俺はまた、泉に例のホテルへ連れて来られていた。
瞳さんと出会ったあのホテルだ。
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