第3章 来栖 龍之介・弐
「つーかお前…よくも俺を騙したな」
瑠璃子はとんでもない女だ。
純情そうな見た目とは裏腹に、泉にも負けず劣らずの"ドS"。
昨晩の事を思い出し、背中に冷たいものが走る。
「あら…私は嘘なんてひとつもついてませんよ?見た目で勝手に判断したのは社長の方でしょう?」
「っ…」
「社長にとっても良い経験になったんじゃないですか?」
「………」
言い返せない自分が悔しい。
黙って俯いていると、クスリと笑った泉が座っている俺を背後から抱き締めてくる。
「私少し妬けちゃいます…。社長ったら会う女性みんなを虜にしちゃうんですから…」
「……、」
「でも…瑠璃子にだけは気を付けて下さいね?」
そう俺の耳元で囁いてくる彼女。
一体どういう意味だ…?
「あの子…所謂"極道の妻"ってやつなんです」
「……は?」
「彼女の旦那さん…セックスの時はドMで可愛いみたいなんですけど…正真正銘○○組の跡継ぎですから」
「………」
泉の言葉に耳を疑う。
(じょ、冗談だろ…)
そう言えば俺はアイツにとんでもない動画を撮られている。
もしあんなものが旦那の目にでも触れたら…
「あまり深入りすると…社長の命いくつあっても足りませんから、程々にした方がいいですよ?」
「っ…」
それから俺は瑠璃子に「会いたい」と言われても、キッパリ断ろうと心に決めた。
けれど…
『会ってくれないなら…あの動画夫に見せちゃいますよ?彼、私の事大好きですから…脅されて無理矢理セックスさせられたって言えば信じてくれると思います』
毎度そう脅され、俺は今も瑠璃子の誘いを断れずにいる。
泉はそんな俺を愉しそうに見ているだけで…
「私が飽きたら、瑠璃子にはちゃんと言って社長の事は諦めてもらいますよ」
「………」
それがいつになるのか、今の俺には分からなかった…
to be continued...?