第1章 係決めの日に休むとロク事ない
さて、帰ろう。
ガラッ
教室の戸が開く。
え…?高杉君帰ったんじゃないの?
「鳩が豆鉄砲くらったような顔」をしているに違いない私に、高杉君はビニール袋を差し出した。
「やる」
受け取った校内生協の袋には、ペットボトルの水とのど飴。
「え?な、え、あの…」
キョドる私に高杉君はもう一度
「やる」
とだけ言った。
「あ、はい。ありがとう、ございます」
気持ちはついていけてないが、喉は限界だったので、私はありがたく一気に3分の1程飲み、ひと息ついた、瞬間、高杉君が私の手からペットボトルを取り、半分程飲み、また私に渡した。
え?今の何?いわゆる間接キ…は気にしないから出来たんですよね。でも、今返されたのを私が飲んだ場合、それ私が高杉君の…。
思考停止。
「おい、終わったなら帰るぞ」
「は、はい!」
私は爆発物みたいに慎重にカバンにペットボトルを入れ、高杉君と教室を出て、第一駐輪場へ向かった。
って…あれ?私の自転車無い。
キョロキョロする私に、高杉君が一言。
「おめーの自転車なら、さっき第2の駐輪場にあったぜ」
「え?ウソ、なんで?私こっちに止めたはずなんだけどな」
あぁ、でも一昨日は既に熱っぽかったからバスで帰って、昨日休んだし、記憶曖昧だな。
しょうがない。向こうに取りに行こう。
「おい」
…今度は何でしょうか。
「第2駐輪場な、不良の溜まり場になってんぞ」
…学校1の不良が何をおっしゃる。
とは思ったけど、取りに行く気は無くした。
今日もバスかな。
「乗りゃいいじゃねぇか」
は?今なんて?
高杉君は自分の自転車の後ろを指す。
「え、いや、2人乗りはさすがに」
「あ?」
だって、ダメでしょ。校則どころかおまわりさんに…あ、高杉君がそんな事気にするわけないですよね。
って事はここで断ったら「高杉君と」2人乗りが嫌みたいな感じになるって事で、それは私の死亡フラグが立つという事で…。