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ハツコイ

第8章 大人の階段登った女子って強気になりがちだよね


8月18日 土曜日。曇りのち晴れ 

午後3時。
私は高杉君の部屋に居る。
物があんまり無くて、ポスターとかも無くて、シンプルを通り越して寂しいくらいだ。
グレーのカバーがかけられたベッドに腰掛けて、自分の足を見つめる。
濃いピンクのペディキュア。
高杉君の両親はそろって友人の結婚式に行っていて、今日は遅くまで帰らないらしい。
つまり…そういう事だ。
私は先週会った、3つ年上の従姉妹の言葉を思い出した。
「ただ痛いだけで、ちっとも気持ち良くなんて無いよ。お互い初めてだったせいかもしれないけど、なんか慌ただしかったし」
…やっぱりそうかなぁ。でも、高杉君って経験ありそうだし…。どうなんだろ。
一応咎めた私を無視して、窓際でタバコを吸っている横顔をチラッと見る。
風が入って来て、薄水色のワンピースの裾が揺れた。
高杉君はタバコを吸い終わり、窓を閉めた。
蝉の声が聞こえなくなり、急に静かになる。
私の横に座り、まだタバコの匂いが混じる息を吐いた。
そっと肩に手が置かれ、そのままベッドに転んだ。
「あの、高杉君、私…」
「分かってる。任せりゃいい。力抜けよ」
「…うん」
高杉君の指が、ゆっくり私のワンピースのファスナーを下げる。ゆっくり下着の線をなぞり、素肌をあらわにしていく。
合間に唇が合わさる。
不意に、高杉君の指が胸に触れた。熱い指。
「…んっ」
私の口から声が漏れる。
一瞬、止まった指は、でもまたゆっくり動き出す。
人の指は、こんなにも優しく動く事が出来るんだ。
自分の体が、縁日で食べた綿飴みたいに、儚く淡い物になった気がする。
お願い。そんなに、壊れそうに触らないで。
「…た、かすぎ君」
「ん?」
「そんなに、そっとじゃなくても、平気、だから」
「…お前な…今の言葉、後悔しても知らねぇぞ」
高杉君はそう言って、唇の端を持ち上げるだけの、私の好きな笑い方をする。
熱い指が、今度は少し速度をつけて、下着に触れた。
悩みに悩んで決めた、薄いピンクに白いレースで縁取られたショーツが、太ももから膝へとすべり落ちて、足首を抜ける。
高杉君の膝が、直接私の太ももにあたる。
「良いんだな?」
今さらそんな事、聞かないで。
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