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ハツコイ

第6章 適度な糖分は人生にも恋にも必要不可欠


高杉君は唇の端を持ち上げる。
「良い場所だろ。会場みてぇに人いねぇし、座って見れるし」
「うん。すごい。全然知らなかったよ。ここも、高杉君のお気に入りの場所なの?」
「まぁな。だから、連れて来たかった」
「…ありがと」
私は恥ずかしくなって、綿飴を口に含む。
花火が上がり、高杉君と私を照らし出し、消えて、暗くなる。その一瞬、高杉君がキスをした。舌が私の口中をひと巡りする。
次の花火が上がり、唇が離れた。
「…甘ぇな」
何も言えずに花火に照らされる私に、高杉君はまた、唇の端を持ち上げる。
「俺は甘いモン、けっこう好きだぜ」
花火は次々打ち上がる。

私は確信した。
藤の花の簪を付けていた女の人は、くれた恋人の事、死ぬまで好きだったはず。
ねぇ、そうでしょ?
花火の匂いを抱いた風が、簪の石を揺らし、微かな音をたてた。
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