第6章 適度な糖分は人生にも恋にも必要不可欠
高杉君…浴衣似合いすぎませんか。
紺の無地に白い帯姿の高杉君を、道行く女の子達がチラチラ見て行く。
なんかいたたまれない…けど負けない。
「お待たせ。やっぱり混んでるね」
「あぁ」
高杉君は私をチラッと見ると、短く返事をしてから、不意に私の手を握った。高杉君って体温高いよね。
「はぐれんなよ」
「…うん」
神楽ちゃんは良いとして、クラスの人とかいたら、ちょっと恥ずかしいな。
そう思ったのを見透かすように、握られた右手に力を込められる。
「俺はお前が俺のモンだって知らせるには、良い場だと思うんだけどなぁ」
「…え、あ、うん」
思わず赤面する私に、高杉君はニヤッと笑い、花火会場へと足を進めた。
金魚すくい、お好み焼き、りんご飴、射的、たこ焼き、チョコバナナ、ヨーヨー釣り。
屋台の匂いと喧騒。
「お祭りって良いよね」
なんだか楽しくなってきて、高杉君に笑いかけた。
「そうだな」
微妙にトーンが上がっている気がする。
お祭り好きなのかな。
「そろそろ花火始まるな。なんか買うか?」
「ん〜あ、綿飴!」
私は高杉君を引っ張るようにして、屋台へ向かう。
「好きなんだよね〜」
嬉々として綿飴を買い、舌に当てる。
たちまち溶ける、甘い味。
「食べる?」
「いや、いい」
「高杉君って甘い物嫌いなの?」
「お前の甘い物好きが銀八基準だとしたら、大抵の人間は嫌い派だと思うぜ」
「いや、あれはさすがに」
話しながら高杉君に手を引かれて、いつのまにか会場近くの神社へ来た。
石段を登って、本殿の横を抜け、宝物庫の前にあるベンチに座る。
ここまで来ると、ほとんど人がいない。
「高杉君?なんでこんな」
言いかけた私の声を、花火の打ち上がる音が遮った。