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ハツコイ

第1章 係決めの日に休むとロク事ない


放課後。
天使のはずの新八君は何故か逃げるようにダッシュで帰ってしまい、私は教室に1人残っていた。
あの駄メガネ、だからモテないんだよ…ってマズイ、私今日1日でかなり性格悪くなっている気がする。
私はため息を吐き、掃除にとりかかった。
清掃の時間に捨てたはずのゴミ箱は、既にあふれている。
ペロペロキャンディーの棒、あんぱんの空き袋、ヤクルコの空容器、マヨネーズの空容器、フーセンガムの空箱、酢昆布の…以下略…。
「なにこれ」
私は可愛くラッピングされた小さな袋を見つめた。半透明のビニール袋からは、真っ黒な塊が見える。なんか異臭もする。
「妙ちゃんのか…」
お昼に「クッキー作ったの。誰か食べない?」とか言ってたな。クッキーに見えないけど。っていうか、よくこれで完成だと思えるよね。
唯一食べた近藤君が早退した姿を思い出し、背すじが凍った。
それにはなるべく触らないようにして、ゴミ袋に詰めていく。
それが終わったら黒板だ。
一応消してはあるが、まだらにチョークの跡が残っているし、黒板消しも汚い。
私は黒板消しを手に取り、端から消し始めた。
「やっぱ届かないかな」
150未満のチビな私には、黒板の上の方を消すのは至難の技だ。まぁ、椅子使えば良いんだけど面倒くさい。
つま先立ちになり、精一杯腕を伸ばした時、突然背後から黒板消しが奪われた。
「!?」
固まる私の横には、無言で黒板を拭いている高杉君がいた。
消し終わると私に目もくれず、ちゃんとクリーナーにかけている。
嘘でしょ、え?本物?あの高杉君?だよね?
綺麗なった黒板消しを片付けた高杉君は、はじめて私に向いた。
「後は何があるんだ」
「え、あ、あの、ゴミ、捨てに」
震えながら指したゴミ袋2つを、高杉君は両手に持ち、1つを私に渡した。
「行くぞ」
「は、はい」
ゴミ捨て場への道のりが、果てしなく遠く思える。前を歩く高杉君の背中を見ながら、私はふと気づいた。
ゴミ、もしかして重い方持ってくれてる?
さっきゴミ袋を両手で持った時、一瞬何か考えてるように見えたけど…いや、たまたまだよね。
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