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ハツコイ

第4章 兄妹(姉弟)が物話のキーポイントってありがちだよね


「ここから出るの?」
私はプールを囲うフェンスを見上げた。
ひし形の網目上のフェンスは、丁度高杉君の背丈くらいある。
「仕方ねぇだろ。校門で万斉に会いたくねぇんだから」
そう言うと高杉君はカバンを放り投げると、フェンスをよじ登って、歩道に着地した。マジか…。
っていうか、私は校門から出られるよね。
まぁでも、ここまで来ちゃったし。
私は意を決し、受け取る構えを見せる高杉君にカバンを投げた。
フェンスの真ん中あたりに足をかけ、思い切り勢いをつけて飛び越える。
ストンッと歩道に降り立った私を、高杉君は珍しく驚いた様子で見つめた。
「運動神経良いんだな」
「うん。こう見えても、空手家の娘だもん」
「は?」
「私のお父さん、空手道場やってるの。私はもうやってないけど、小さい頃に教わったから、体は動くよ。ちなみに弟は中学生の部で全国2位だった」
「…そりゃぁ…ハードル高えな」
高杉君はため息と一緒につぶやいたから、最後が聞き取れなかった。
「なに?」
「…なんでもねぇよ。帰るぜ。今日は俺も歩きだ。たっく万斉のヤツ…」
ブツブツ言う高杉君の背中を追いかける。
握られた左手は、火傷したみたいに熱いままだった。
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