第4章 兄妹(姉弟)が物話のキーポイントってありがちだよね
7月9日 月曜日 晴れ
「は?」
お昼休みのまったりとした教室で、私は神楽ちゃんの真っ青な眼をまじまじと見つめた。
「だからナ、高杉君ちゃんの事好きだと思うって、バカ兄貴が言うアルョ」
「な、な、なんで?」
「土曜日に神威達に会ったダロ」
「うん」
「その時、高杉君もいたアル」
「うん」
「で、他にも友達が居てな、そいつらがちゃんの事、可愛いとか、彼氏いるのかなとか言ったらしいアル」
「う、うん」
「そしたら高杉君が睨みつけて、『あいつはダメだ』って言ったアル」
「うん…は?」
私はカルピスソーダを吹きそうになった。
「でな、神威が『晋助狙ってるの?』って聞いたら黙っちゃったって」
神楽ちゃんは可愛い顔でニヤッと笑った。
「これは、恋アルョ」
もー!意識しちゃうじゃん!
慣れた手付きで黒板消しをクリーナーにかける高杉君の横で、私は道具箱を整理していた。
今日は珍しくゴミが無くて、もう掃除は終わる。終われば、高杉君は今日も送ってくれるのだろうか。
あんな事聞いた後で、いつも以上に気まずいよぉ…。
「どうした?」
高杉君の声に心臓が跳ねる。
「さっきからボーッとしてるぜ」
「いや、別に。今日、暑いなって」
「…あぁ」
心臓もたない。
大声が聞こえたのは、カバンを持った瞬間だった。
「晋助ー!いるかぁー?」
えっと、確かこの声、川上、万斉さんだっけ。高杉君よく一緒にいる気が。
遊びでも行くのかな。どーぞどーぞ、私今日は1人で帰るので。
「ねぇ、私、今日は…!」
話しかけた私の口を押さえたのは、高杉君の手だった。
「!?」
そのまま体ごと引っ張られて、教卓の影に2人でしゃがみこむ。
え?なにこれ?なんなの?
教室の戸が開く。
「あれ?いないか。仕方ないな、校門で待ってれば来るか」
万斉さんのひとり言が響き、教室の戸が閉まり、足音が遠ざかる。
それからたっぷり30秒して、高杉君の手が離れた。
「な、え、何?」
「あぁ…悪ぃ」
死にそうにドキドキして、立ち上がれない私に、高杉君は目をそらした。