第4章 兄妹(姉弟)が物話のキーポイントってありがちだよね
あいつ…今思い出しても腹がたつ。
私は小さくため息を吐き、
「えっと…弟に貸してて」
とだけ言った。
高杉君は聞いたのか聞いてないのか、自転車を押して歩き出した。
え?何で乗らないの。
高杉君は黙って歩く。私は仕方なく、少し後ろをついて歩く。
交差点に着くと、高杉君は私の家に続く坂道に向かって歩いて行く。
「え、高杉君の家って反対の道じゃ…」
戸惑う私を無視して、高杉君はゆっくり歩く。やっぱり仕方なく、私もゆっくりついて行く。今日も入道雲が高い。
ふと、電柱に立てかけられた看板に気付いた。昨日もあったっけ?
『痴漢注意!最近1人歩きの女性が突然男に抱きつかれるという事件が発生しています』
え〜。嫌だなぁ。家の近くでこんな。
…あれ?もしかして、この看板見たから、送ってくれてるの?
私は高杉君の背中を見ながら、弟のニヤニヤ笑いを思い出していた。