第3章 告白の後の話
カチカチカチカチ…
壁にかかる時計の針が動く音と、
私の荒い吐息の音だけが
会議室に響いている。
ドアの向こうには
たまに小さな足音が響いた。
ゆっくり壁に背中をつけ、
ズルズル鈍い音をたてながら
床にお尻をつけた。
ひんやりする感触を感じたが、
もう腰が抜けたように力が入らない。
(あれは誰だ。)
恐い…本当に恐かった。
心拍が早く手が震えている。
あそこまで取り乱し、怒りを表に出すカカシを、初めてみた。
今まであんな姿を、
一度たりとも、
見たことがない。
本当にわたしは
カカシを見ていない。
(あんな人知らない。)
本当に、自分しか見えていないことは分かった。
カカシは自分を理解出来ず、
別れた事を後悔している。
あんなに苦しみ辛そうに
嘆いていた。
そこまで嫌なら何故
私を選ぶ?
恐い、これ以上嫌われたくないのに、全然わからない。
あんな恐いカカシに
抱かれたくない。
絶対無理矢理犯されて、
性のはけ口にされる。
(そんなのは死んでも嫌だ。)
自尊心を傷つけられてまで
彼に抱かれる意味はなんだ?
何で?
どうして?
優しいカカシに戻って欲しい。
気持ち悪い。
あんな人に、
もう嫌悪感しか抱かない。
嫌だ嫌だ…嫌い。あんな人、
嫌い…恐い…
でも、
そうだとしても、
だったとしとても、
最初に手を挙げたのは私だ。
声を上げたのは私だ。
最初に狼煙を上げたのは私だ。
私だ。
私が彼を…不幸にさせた。
ツバキを愛していたのに
ツバキを大事にしていたのに
私が自分勝手に邪魔をした。
邪魔な人間が、仲を引き裂いた。
それは、罪ではないのか?
償いをしなければいけないのではないか?
彼は苦しんでいる。
彼は後悔している。
もしかしたら、彼は
泣いているのではないか?
ツバキを想い、悔やみ、悲しみ、泣いてるんじゃないか。
彼がそんな風に泣いていたら
もう、私は立ち直れない。
彼を傷つけてまで私の想いを
成就させたいのか?
"彼が泣いていたら?"
そう思うと、
泣けてきた。
(情け無い27歳だな…)
彼にまず謝る事が大事だと
思い、私は涙をぬぐい、部屋をでた。