第4章 刹那主義
「謙信、お前まさか見たのか…?羨ましいなぁ」
「何をだ。
…下衆な考えはすぐに捨てろ、想像などしようものなら斬る」
「え、何なに?どうして険悪?」
「ばっ、おまっ、女が逆さ吊りって…!!」
「幸、顔が紅い。やーいむっつり」
突然刀を抜いた謙信様と、笑いながらそれを宥める信玄様。
紅くなってぷりぷり怒っている幸村と、それをいなす佐助くん。
全てはいつも通り、なのだけれど――
漸く諍いも収まり、酒盛りの前に一旦解散するか、と歩き出す。
そんな中、信玄様が隣に並ぶと、私にそっと囁きかけた。
「どうだった?宝物、は見つかったかな」
「…やっぱり、わざとですか」
信玄様は楽しそうに笑っているけれど、こっちは内心大波乱です…
そんな気持ちを大いに含んで睨みつけてみるけれど、相変わらずの優しい笑顔。
ため息しか出ない私の肩をぽん、と叩くと信玄様は先を行ってしまう。
そう、モヤモヤするくらいなら直接聞けばいい。
竹を割ったような謙信様の性格のこと、きっと答えてくれるはず、なのに。
「、どうした。急がないか、宴に遅れても知らんぞ」
「…はいっ、急ぎますねー!」
珍しく差出された手に飛び付く。
飛び付いた勢いによろめきもせず、謙信様はすたすたとまた歩き出す。
手を繋いでくれたからって、歩調を緩めるでもない…
そんな不完全さに、慣れなくも手を繋いでくれた事に。
おかしいかな、またきゅんとする。
この関係を壊さずにいるには、どうすればいいのだろう…と。
またぐるぐる悩んだとしても、信玄様の用意したお酒は美味しいに違いないのだった。