第4章 刹那主義
結局、頭で考えるより身体が速い、と言う事を立証する羽目になってしまったらしい。
幸村が武田印の書かれた紙の巻かれた、酒樽を自慢げに見せてくるのを一瞥する。
中身に罪はないんだし…どうせ今日もこの勝敗をネタに酒盛りだ、負けた罰があるわけじゃないんだからと溜飲を下げる。
「…そういえば、。罠にかかったのかい?
駄目だろう、佐助。
女子はちゃんと護ってやらないと」
「佐助くんは頑張ってくれたのですよ、でもいくつか…
そうだ、謙信様にも助けてもらっちゃって!
だから結果オーライ!」
「しかし、どんな罠にかかったんだ?
怪我などしていないだろうな、軒猿達は容赦がないからね」
「えーっと…」
自分が罠を仕掛けさせたのを棚に上げて、よくもまぁ。
心配そうな信玄様に説明するため、今までの道のりを思い返してみる。
床板が抜けて穴に落ちたヤツ、
顔面目掛けて水が跳ねかかってきたヤツ、
突然物陰で爆竹が破裂したヤツ、
そして最後の天井から吊り下げられたヤツ…
指折り伝えてみると、信玄様はほんの少しだけ動きを止め…それから意地悪げに笑って、謙信様に向き直った。