第17章 利己主義
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「損な役回りですね」
佐助のそんな言葉に、光秀は小さく微笑みながら振り向いた。
その顔にはいくつもの細かな傷が走っている…
無理もない、佐助達が本能寺に立ち上る風の渦を見つけ、駆けつけた時。
既に光秀はそこにいて、中に入ろうと試行錯誤していた…その時に、巻き上げられた石砂でついた傷だ。
「そうか?
俺は割と満足している」
信長様と鞠の仲は以前にも増して深まり。
謙信公とに貸しも作れた。
そんな風に挙げ連ねられ、佐助はほお、と深い感嘆の息をついた。
「なんと言うか、見習います。
この世で忍びとして生きていくからには…
そういうパイプ、いや、人との繋がりは重要そうだ」
「此度の件、佐助殿にも世話になった…主に代わり、礼を言う」
そう言い残すと信長を追いかける為か、急いで身を翻した光秀はしかし…
少しだけ思案するような様子を浮かべ。
そしてまた、佐助の方へと振り返り口を開いた。
「…に宜しく伝えてくれ。
あの娘とは、きっとまた何処かで道が交わる気がしてならない」
それは予測なのか、はたまた願望なのか──
気にはなったが、佐助は深く問わず頷くだけ。
光秀が去っていくのを見送るように、その場に立ち続けるのだった。