第16章 弁論主義
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「ほう、では魔王も姿を見せるか。
面白くなる」
「謙信様、全く面白がっている場合じゃないですよ」
冷静なツッコミを受けても尚、謙信が楽しげに微笑む。
平常運転だな、と佐助も慣れたもので、馬に揺られズレた眼鏡のフレームを押し上げた。
あと少しで、京…
透き通るほど真っ青に晴れ渡っている秋空を見上げ、似つかわしくないほど重苦しい溜息をつく…
「女同士の下らん喧嘩、では終わらなさそうだ」
謙信が小さく呟いた一言に、掻い摘んだ説明でも何となく事の重大さは伝わっているらしい、と安堵して。
聡明な主に遅れを取っては、何を言われるか分からない…
また馬の尻に、鞭を入れる。
そして、ざわり、と空気が揺らぐような雰囲気と。
まとわりつく様な湿気に、思わず顔を顰めたのだった。