第13章 反証主義
あの夜、突き放してくれたらよかったのに。
もしくは今がそのチャンスなのに。
勝手な事をする私を、満足に睦事ひとつ出来ない私を、怒って、詰ってくれたら諦めがつくのに。
離れたくても離れられない、また傷口は暫く塞がらない。
零れそうになる涙が落ちてしまう前に、と。
立ち上がって、お辞儀をして、部屋を出る。
廊下にいたうさぎさん達がぷう、とひと鳴きして擦り寄って来るけれど、今は兎ですら憎らしい。
謙信様の傍に居れていいな、なんて馬鹿げた考えを振り払うように。
礼を失していると分かっていながら、一刻も早くここから離れたくて駆け出すのだった。