第9章 批判主義
「尋問とは、穏やかじゃないですね」
「…危険を冒して安土城に乗り込んできたからには、何か腹に一物あるのだろう?」
そんな訳じゃ無いんだけどな、と困ってしまう…
そんな私の表情から全てを読み取ろうとでも言うように、光秀さんは益々眼光鋭く、こちらをじっと見つめている。
果たして、彼に全てを話してしまって良いものか?
何も他意は無かったと言え、謙信様の城からやってきて、興味本位でちょっとお邪魔しました、なんて…
謙信様の不利にならないか、そればかりが気にかかる。
「まず…お前はどこから来たのだ」
「…言えません」
「命を取られようと、言わないつもりか?」
「わぁ…痛いのはなるべく嫌ですけど、言えません」
不穏な雰囲気になってきた、と溜息をつく。
元々は謙信様の役に立てれば、なんて考えで申し出た只の手伝いだったのに。
「では、問の内容を変えるとしよう。
鞠とは何があった」
いよいよ、私は口も開けず黙り込み。
光秀さんの視線を避けるように、俯いた。
鞠さんと私の間に、あったこと…
「色々、ありました」
「…ほう」
「でも、鞠さんが皆さんに話していない事なら…
鞠さんが皆さんに知られたくない事なのだと思います。
だから、すいません…それも言えません」
これは首斬られるやつだ…
そんなある種の覚悟をきめて、目を閉じる。
最期に謙信様に会いたかったな、
鞠さんとちょっとくらい話出来るかな…
光秀さんと私は、お互いに暫く黙り込んだままだ。
静寂が焦れったくなって、おずおずと視線を上げてみる。