第9章 批判主義
明智光秀。
これまた、戦国時代のビッグネームの登場だけれど…
なんてったって、しょっぱなから上杉謙信に武田信玄、真田幸村に会ってるんだもんなぁ。
もはや慣れてしまった私は、しげしげと彼を観察する。
美しい、妖しいほど深い琥珀色の目。
真っ白な肌に、長いまつ毛が影を作る。
勿論がっちりとした男の人なのだけれど、持ち合わせているどこかたおやかな雰囲気。
暫く観察していると、彼はふ、と小さく笑い目を逸らした。
それを皮切りに、口を開く。
「…私は、です」
「か。お前は…」
光秀さんが何かを聞きたげに上げた声は、しかし近付いてくる足音に阻まれた。
私も聞きたいこと、沢山あるのに…
何故ここにいるのですか、とか、そもそもここはどこですか、とか。
私は無事に春日山に帰れますか、それから…
鞠さんは何か、言ってましたか?
光秀さんが黙り込んでしまったから、私も我慢して口を噤む。
暫くの後、襖の向こうから声が聞こえてきた。
「光秀さん、来ました。入っていいですか」
「あぁ、大丈夫だ」