第8章 懐古主義
そしてその後は案の定。
月次報告の成績上位者に、彼の名前が上がってくることは無くなった。
ほんの少しの寂しさを覚える、自分は何とも身勝手だな…
そんな風に思いながら、パソコンの電源を落とす。
仇討ちなんて言ったら聞こえはいいけれど、実際は単なる鬱憤晴らしだ。
きっと鞠さんは、好きだった彼が落ちぶれる事など望んでいなかっただろうから。
「…恨まれるなら、どちらかって言うと私かなー」
腕時計にふと目を落とすと、今日も待ち合わせの時刻が近付いていた。
急いで照明を落とし、事務所を閉める。
優しくてお節介な友人達は、今日もいい男を揃えてくれて居るのだろうけれど…
きっと、係長以上のイケメンはいないのだろうし。
上を行くイケメンだったとしても、中身まであれ以上なら困る。
「どっかにいないかなー、スーパーイケメンで…
周りに流されず、何かに寄りかからない、自分をしっかり持った強い人ー!」
自分のために、素直に、偽らずにいることなんて、社会生活を営む限り出来そうにない。
どうしたって逃げられない、日々は惰性的に続いていくのだから──