第10章 二度目の初夜/警察学校組【降谷贔屓オール夢】
〇金曜日
昨日、萩原さんから貰ったそれを興味本位で一つだけ開けてみたけれど、ゴムの匂いに少しだけ顔を歪めてごみ箱へ捨てた。…あの日零がつけていたそれと同じものだとは、なんとなく思えなくて変な気分。
部屋に置いておくのも居た堪れず、鞄の奥底にしまった。
そして昨日に続けて零が私を避けていて。
正確には、訓練や授業中は“さん”と呼ばれて、必要以上に近づくこともなくて。
松田さんと零も相変わらず喧嘩中みたいで。…っていうか、二人とも怪我してた。
零に話したいことがあるのに。
結局、私はどうして零がこんなに怒っているのか、避けられているのか、はっきりとはわからないまま放課後を迎えた。
「〇〇、帰ろう」
「…ヒロくん」
零に避けられるのは、苦しいんだ。
私と話したくないっていうオーラを全身で出されていて…泣きたくて苦しい。
「降谷、あまり〇〇のこと泣かせると奪うから」
「勝手にしろ」
「宣言したからな」
行こう、と言われて肩を抱かれた。
振り向き零を見ようとすれば、ヒロくんが頭を抱き寄せてきて教室をでる。
「ヒロくんっ、あれじゃ誤解される…!」
「いいんだよ、確かに〇〇も鈍感だけど、やりすぎてるのは降谷のほうだから」
「…でもっ、勝手にしろって…」
「本心じゃないから大丈夫」
「このまま、別れたり」
「しないよ。それに、万が一そうなったときは〇〇が幸せになるまで責任取るよ」
…なにを、言ってるのか。昇降口で立ち止まって。
ヒロくんは…片思いの時もそうだったけど、優しさが勘違いしそうになる。
「それより、今日は〇〇の話を聞く日だから。今日たくさん話してスッキリしたら、降谷に連絡してやって」
「…うん」
「まぁ、降谷のことからかいすぎた俺たちにも責任はあるかなって思ってるから」
「からかい…?なにかしたの?」
「あいつらと、デートしただろ?」
「デート…?」
「…あ、〇〇にその気がないパターン」
「お出かけ、はした」
「そっか」
じゃあ、と手を繋がれて。
「今日は俺とデートして」
ヒロくんの、笑顔を向けられて。
…私は、ヒロくんが優しく笑う姿に惹かれて…
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