第1章 初夜/降谷【警察学校時代】※裏
「水族館とか」
「花火大会とか」
「プールとか」
「あ、でもアレだな。〇〇の水着姿、見たことな」
殺意のある視線で荻原さんを睨む零に言葉を途中で飲み込んだ目を逸らす姿に、笑ってしまって。
「水着かぁ…みんなでプール行く?」
「〇〇」
ダメです、と謎の威圧的な敬語になんで私が怒られてる?と視線を4人に向ければゼロも大変だなと溜め息をつかれ。
「楽しいところ行くなら、みんなで行きたい」
「……〇〇がお兄ちゃん思いで嬉しいよ」
「そうだな、いい妹を持った」
「ムスメじゃなくなってる」
伊達さんと荻原さんが私の頭を撫でて…
ヒロくんと松田さんが頑張れ、と零の肩を叩いていた。
『今度の休み、外泊届出しておいて』
発展があったのは、零からのメールだった。
後に、これすら荻原さんが送っていたのを知ったけど。
その意味がわからないほど…無知なわけでもない。
週末実家に帰る、と言って外泊許可をもらって。
その件について絶対からかわれると思ったのに、不自然なほどみんな外泊について触れなくて。
零は寝る前に共有フロアで会ってもあまり目を合わせてくれなくて。
…男の人達にしかわからないその空気感があって、何となく疎外感があった。
「…零、…その、…外泊、嫌になったら言ってくれて良いんだよ…?」
「違うから、…楽しみだから、そんなこと言わないでくれ」
…手を繋いで、優しい顔で目が合って。
「〇〇…キス、していいか」
共有フロアには、監視カメラがあって。
…そのカメラの死角になるようカメラに背を向けて二度目のキスは、甘く感じた。
少し触れるだけの行為。
「……零…楽しみに、してる」
「あぁ、…おやすみ」
「おやすみなさい」
本当は、例えるなら踊り出しそうなくらい舞い上がっていて。
その週末、寮ではなく駅で待ち合わせして。
「零っ!おはよう」
一泊用のキャリーを引いて、駅前で一際目立つ零に声をかけた。
「おはよう、〇〇」
「…どこ行くの?」
「行きながら話すよ」
荷物持つ、とキャリーを代わりに引いてくれて。
「温泉、…どうかなと」
電車で2時間くらいかかる温泉の有名観光地の名前を挙げられ。
温泉は好きだし、もちろん嬉しいけれど…
本当に泊まるんだなと実感して顔が赤くなって。
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