第1章 初夜/降谷【警察学校時代】※裏
「お前らがいつまでも付き合わないから心配してだな」
「見るからに両思いなのに」
「小学生の恋愛かと思ったよ」
「娘を持つ父親の気持ちを味わってたんだよ」
わざわざ聞こえるように。
「〇〇、ゼロのこと好きだろ」
ヒロくんが、私を見て。
その言葉に自覚するほど顔が赤くなっていくのがわかって背を向けた。
「そんなわけないです!」
そんなわけない。
だって意地悪で…好きになる要素なんて
気がつけば目で追っていて、名前を呼ばれるが嬉しくて…今日だって…好きになる要素しか思い当たらなくて。
自覚した。
後ろから近づく気配が、零だとすぐ分かるのも…
「〇〇、悪いな」
「なんで零が謝るの」
さっき、期待したんだ。キスをされるんじゃないかって。
振り返って零を見上げた。視線がぶつかって…抱きついた。
背伸びをして、ヒールの高さも相まって近づくけど届かない距離に零の首元を掴み引き寄せ…唇が触れる。
「…先帰る」
後ろ4人から上がる歓声。
当の本人の顔を見ることはできなくて。
「待て」
腕を掴まれて…零も私も、顔が赤くて。
「付き合おう」
零の言葉に頷いて…
4人が走って来て…私たちを囲むようにおめでとうと言ってきて。
「遅い!ほんっと遅かった!」
「焦ったいんだよ、いつも器用なくせに」
零が肩を組まれからかわれて。
あの日みんなに囲まれて照れながら笑ってる零は、…今でも思い出すことがある。
あの降谷零の彼女
他には誰にも言っていないはずなのに、その噂はすぐに広まって。
零狙いだった先輩含む女性から疎まれて。
ルームメイトには毎日毎日羨ましいと言われて。
零に見合う女性になりたいと、強く思うようになって。
これまで以上に学業に力を入れて。何かと6人でいる時間の方が多かった。
わからないところを確認しあって、教えあって、一つの問題にそれぞれの解釈を交えて話し合う。
零とは特別発展があるわけではなく、ただ…隣に座る機会が増えたとか、消灯前に共有フロアで二人きりで話す時間が増えたとか。
本当に、健全すぎるお付き合いに痺れを切らしたのはいつも私たちじゃなくて。
「なぁ、お前らデートとかしないの」
「なに急に」
「関係ないだろ」
放課後、課題をまとめている時に突然松田さんに言われて。
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