第9章 アンケ夢/安室透【痴話喧嘩】
寝ずに掲示板の書き込みを削除して。
他にも少し悪質と思われるものは消しておいた。
全てを消して自分なりに納得いく形に仕上げたのは、夜明け。
「…あとは、書き込みしたこのアドレスの持ち主調べたら良いんだけど」
流石にそこまではしなくていいか、と思ったり。
やりすぎると後で叱られる。
…帰ってお風呂に入って…早めにポアロに行こう。
モーニングの時間に間に合えば、二人で話せないだろうか。
喧嘩するほどじゃないのは分かってる。
素直に謝れば良いだけ。
…と思ってたのに。
何故今日は朝から女子高生がいるの。
「〇〇さん、おはようございます」
「…いらっしゃいませ!」
透さんが一瞬の間の後、迎えてくれる。
カウンターで、と指差して適当に座る。
…何も言わなくても目の前に置かれるのは淹れたての珈琲。
見上げてお礼を告げようとしたのにその相手はすぐにいなくなる。
「……謝る機会くらい頂戴よ、馬鹿」
「〇〇さん、まだ喧嘩してるんですか?」
「むしろ悪化……シマシタ」
こっそり聞いてくる梓さんに、小声で返す。
女子高生に勉強教えながら笑ってる姿を横目に頭を抱えそうだった。
「なんでですかっ」
「…全面的に悪化したのは私が悪いです」
あんな声、聞きたくないのに。
「喧嘩の理由って」
「…大したことじゃないです、それにそれは解決しますから」
梓さんが笑ってくれたら、その問題は解決したのと同じ。
「安室さん聞いてくださいよー。掲示板に書き込んでた内容が朝になったら消えちゃってて」
「そうそう、一部のサイトは閉鎖されたって」
「へぇ。何か規約違反の書き込みでもあったのでしょうか?」
「全く違う掲示板も同じタイミングだったから、不思議だねって話題があって」
透さんは相槌を打ちながら、それが私だって気づいてる。
「誰かが意図的に消されたのかもしれませんね」
棘を感じてしまうのは、私の被害妄想かもしれないけど。
「梓さん、モーニングセットください」
「はーい…安室さん、モーニングセット入りました!」
邪魔された、と女子高生から聞こえる小さな声。
注文してるのが私だと気付いたらしく、睨まれてるし。
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