第9章 アンケ夢/安室透【痴話喧嘩】
「…まぁ、私がやることは掲示板の特定を書き込みの削除かな」
梓さんへの攻撃は、許せないこと。
…なんやかんやと知らないうちに大事になっているなんて笑えてくる。
本当に零と再会するまでは、他人に関わらないように興味を持たないようにしていたのに。
「…零なんて嫌いだ」
「改めて言わなくていいだろ」
仕事は進んでいるのか、と降谷さんが書類と…ペットボトルを持って立っていて。
「あっ、…仕事は大丈夫です」
「そうか、人の悪口言う暇もあったみたいだからな」
これ片づけておけ、と厚めのファイルを渡された上に、ペットボトルのお茶。
「口動かす暇があるなら手を動かせ」
喧嘩の延長戦なのに。
“改めて言わなくていいだろ”と言った声が少し切なかったせいか、私は反論ができなくて。
「……無理するなよ」
零が立ち去って行く気配を感じて…慌てて追いかけたら、人にぶつかった。
「降谷さん…!」
「…降谷さんならまた外出たけど」
びっくりした、とぶつかった相手を見上げると結城さんで。
ごめんなさいと謝った。
「慌ててどうしたの」
「……なんでも、ないです」
降谷さんとのことならまだしも、安室さんとのことを結城さんに言うわけにはいかない。
パソコンの前に戻って、資料の打ち込みとまとめ。
「明日もポアロ行くかなぁ……」
…透さんと喧嘩したなら、透さんと仲直りしないといけない。
あんな声聞いたら、折れるしかない。
仕事が終わりながらも透さんが言っていた掲示板の存在を探す。
…最近は地元の掲示板や学校の裏サイト…色々ある。
「昔はこういうのなかったのに」
そんなことを言い出してるあたり、歳をとったなとぼんやり思う。
ポアロの場所から考えれば学校もいくつかに絞れる。
地元の掲示板や、オススメ喫茶店の掲示板の書き込みいくつか調べて、マスターをハッキングして書き込みを消していく。
「……何してんだか」
こんなことをするために、透さんと喧嘩したのだろうか。
してしまったんだけど。
「あー……だって、透さんの職場の人だもん…透さんのせいで嫌な思いして欲しくない」
書き込み削除して、学校の裏サイトはまるごと封鎖した。
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