第8章 夏の思い出/スコッチ・降谷【警察学校時代】
外泊届出しておくんだった、と言ったのは零で。
その言葉の先の意味を理解するには私には刺激が強くて今日は帰るの一点張り。
「無理強いさせるつもりはないから安心して…な?」
そんなの、分かってる。
零が私に無理強いを求めるわけがない。
だから…男の人が、そういう行為…どのペースでしたら良いのかとか、不安ではあって…
「でも、休みの日に…〇〇がシても良い日に、〇〇からキスして」
「……でもそれじゃ、キスしたら…誘ってることになる」
キスだけなら…今だってしたいのに。
「そこは察して」
我慢しているところ好きな女にキスされたら、なんて。
花火も終わり、そろそろ帰るかと零と歩く。
楽しい時間はすぐに終わってしまう。
…せっかくの浴衣なのに、…帰ったらお風呂に入って寝るだけ。
「…勿体無いな」
口に出てしまったかと思って顔を上げれば、隣にいた零が言った言葉だった。
「……うん、せっかくヒロくんに着せてもらったのに」
「は?」
零の声音が突然変わった。
「今なんて?」
「?……あれ」
言っちゃいけなかったかもしれないと、零の表情で。
「…〇〇、門限ギリギリになるから覚悟して」
俺以外になにされてるんだって零が言うから…
「……っ…それなら……部屋、来る?」
私の誘いに、零が息を飲んだのがわかる。
頷いてそれから部屋に入るまで、無言。
寮に着いて、部屋に零を招く。
「…ヒロに連絡するから」
お風呂に、入りたい。
…でも、多分…入らせてくれないんだと思う。
離れないで、と零が手を握ったままヒロくんに電話をかける。
『どうした?』
「…何かあったらアリバイ頼めるか」
『……〇〇、そこにいるなら少し変われるか?』
零とヒロくんの会話が聞こえる距離で。
零が電話を私の耳に当てる。
「ヒロくん…あの、ありがと…」
『…〇〇、…良かったな』
降谷が喜んでくれて、と言われて…頷いた。
『何かあったら連絡するから』
「頼む……ところで〇〇の体どこまで見た」
『見てないけど』
「絶対だな」
『…見ては、いない。あとは本人に聞いたら?』
じゃあな、と切られる通話。
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