第1章 初夜/降谷【警察学校時代】※裏
「〇〇、おはよう」
いつも制服で会うか、共有フロアで見かける部屋着のような私服ではなくて。格好良い、素直にそう思った。
「私服のスカート、初めて見た」
「……着せられた」
「?なんで」
「…どっかのイケメンさんと並ぶのにTシャツジーンズはあり得ないそうです」
「俺のため?」
声が少しだけトーンが上がって。
零が頬を赤くしながら嬉しそうに笑ったから…そうじゃないと言い返せなくて。
履きなれないヒールに歩くスピードがいつもより遅い私の歩幅に合わせて、道路側を歩く零。
都内は休日で人が多くて人に流されそうだと言えば、手を繋がれて。
映画館で、手が触れて。
映画の内容は…半分くらい頭に入らなくて。
スクリーンに映し出されるキスシーンに謎の恥ずかしさに目線を下げると…零の顔が近づいてきて自然と目を閉じてしまって。
唇が触れそうなほど近い距離で『アイツらにつけられてる』と囁かれた。
「…ED流れたら、席外すぞ」
先回りする、と零が言って…映画のEDが流れたら…私の荷物を持って手を引き劇場から出た。
「零…っ、アイツらってまさか」
「そのまさかだよ」
断ったのに。
全員私の誘い断ったのに、なんで男4人で恋愛映画を観に来た。
「〇〇、…ちょっと我慢して」
どうしたのか尋ねようとした時…零は私を横抱きした。
零のようなイケメンが、女を横抱きにして走ってたら…そんなの目立つに決まっていて。
だんだんそれすら楽しくなってきて。
零の首に腕を回して、もっと早く走ってって、アトラクションを楽しむように言えば零も笑って走るスピードをあげた。
「零、ちょー楽しいっ!」
「俺もだっ…!」
人混みを抜けて辿り着いたのは都内にある植物公園。
零が私を降ろして、当たり前のように手を繋いで…のんびり観覧した。
「零、今日は付き合ってくれてありがとう」
今度は彼女と来なよ、と言えばお前もなって返されて。
「そうじゃねぇだろ!」
野次が飛んだ。
「馬鹿、バレるっ!」
聞きなれた友人の声。
植物の陰に隠れきれていない男4人。
「尾行の試験なら全員赤点だよ」
「〇〇、ちょっと待ってろ」
零が凄くにこやかに4人の前に立ち…
聞こえない何かを言って…引きずり出して正座をさせていた。
…大の大人が4人並んでるのは笑える光景だと思う。
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