• テキストサイズ

【DC】別れても好きな人【番外短編集】

第8章 夏の思い出/スコッチ・降谷【警察学校時代】


「そろそろ入っていいか?」

コンビニの袋をもったヒロくんが、扉の前で笑っていて。

「ダメだ」
「ヒロくんおかえりなさいっ」

起き上がってベッドの上で正座をすれば笑われた。

「…ただいま」

少しだけ切ない表情をしたのは、気のせいなのか。
零とヒロくんとしばらく話していたら、消灯時間が近づいてアリバイ作りに協力してくれるルームメイトがいないので部屋に戻らなければいけない。
二人に隠されるように挟まれて、共有フロアに向かった。別れ際にヒロくんから忘れ物と言われて浴衣の入っている紙袋を渡されて。零がいる前だったから返すこともできずに受け取った。
自室に戻ると、ヒロくんからメールが届いて…明日一緒にランチすることになった。
ランチの誘いは建前で、浴衣の着付けだろうなと思うと…その日、寝る直前まで浴衣の着付けの仕方を動画で勉強した。


昼過ぎに、ヒロくんから共有フロアにいると連絡があって私も向かった。
カメラからうまく隠れるヒロくんには関心をする。
…人の気配に注意を向けながら、私の部屋に着いてヒロくんを招き入れる。

「どうぞ…あまり、他の子の私物見ないであげてね」
「気を付けるよ」

〇〇のベッドは?と聞かれて…二段ベッドの上を指さした。

「…覗いてもいい?」
「え、だめ」
「俺たちのよく見てるじゃん」
「…それはそうだけど、……なんか、恥ずかしい」

ヒロくんの悪戯な笑みに抵抗を諦めた。

「それに…見ても面白いものはないと思うけど」
「面白いよ、降谷の反応が」

…そっち狙いか、と思えば緊張がほぐれて笑う。
男の人と、二人きり。
ヒロくんだけど。
二段ベッドの梯子を上り、私のベッドにヒロくんが…いる。
変な感じだった。
初恋の人が、私にこんなに近くにいて私の部屋にいて…私のベッドに座って、なぜか嬉しそうに笑った。

「お昼どうする?」
「あ…冷やし中華!さっき作ったの」
「おー、いいね」

一緒に食べようと冷蔵庫から取り出せばヒロくんがベッドから降りてくる。

「美味しい」
「錦糸卵以外は切っただけだけどね」
「手間かかるだろ、嬉しい」

不意打ちの満面の笑みに、顔が赤くなるのが自分でもわかった。

「…こんなのでよかったら、いつでも作るよ」
「それは降谷に言ってやれ」
「零には教わるほうだから」
「確かに、あいつの料理美味いもんな」



/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp