第8章 夏の思い出/スコッチ・降谷【警察学校時代】
「〇〇、ちょっと飲み物買ってくるから」
「私も行く…っ」
「またこっそり入ってくるのも面倒だから待ってて」
それもそうか、と思ってヒロくんの言葉にうなずいた。
「〇〇、明日のこと誘えば機嫌直るから」
「…でも」
耳打ちするようにヒロくんが話すから…零からの視線がまた痛くて。
行ってくる、と頭を撫でるヒロくんの手が好きだなって思いながら…行ってらっしゃい、と出ていく背中を見送った。
「…零、寝ちゃった?」
振り返ると壁を向いて寝転ぶ零の姿に、寂しさを感じて近づく。
「零」
「…なに」
「零には、ドキドキするから…少しずつ…してほしい」
「………前に松田にはしようとしたくせに」
「そんなこと覚えてたの…?」
初めてこの部屋に来た時のことなら、零と付き合う前の話じゃない、と思えば小さく笑ってしまう。
「零の顔が、見たいです」
零が寝返りを打って私を目を合わせる 。
他にも言いたいことがありそうな顔を向けられて、小さく笑う。
…零の…子供っぽいところが見れて…可愛くて愛おしい。
「……キス、してもいい?」
「…〇〇は俺のご機嫌とりが上手いな」
おいで、と零が寝転ぶベッドをぽんぽんと叩かれて。ちょっとだけだから、と前提を置いて零のベッドに寝転んでキスをした。
触れるだけのキス。
「機嫌、直った?」
「…まだ」
「…意地悪」
触れるだけのキスが物足りなくなったのは、零が先で…胸の膨らみにそっと手が触れられて撫でてくるから慌てて体を離した。
「顔真っ赤」
「っ…零のえっち!」
「〇〇に対してだけだけど?」
零が機嫌直ったのか、寝転びながら肩を揺らして笑っているから…なんだか嬉しくて、笑いがうつる。
「あ…そうだ、明日、なにか予定ある?」
「ないけど」
「…じゃあお祭り、行かない?隣駅なんだけど」
「いいけど、ヒロにも予定聞かないとな」
「…っ…その、…二人で、行きませんか」
デートがしたいですと告げると嬉しそうに笑顔を向けられて。
「喜んで」
「…っ、じゃあ、17時に…駅で」
「寮から一緒に行けばいいだろ?」
「その前に少し予定があって…だから、その」
「…わかった。駅で」
楽しみにしてる、と言われて…嬉しくて、頷いた。
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