第7章 アンケ夢/降谷零【警察学校時代】
伊達さんの膝の上に我が物顔で座って、お酒をまた飲む私に伊達さんは最初のうちは嫌がっていたけれど、そのうち諦めて好きにさせてくれた。
「そろそろ片付けるか」
「〇〇の目も半分閉じてるからな」
「というか降谷の顔、途中から怖くなってたから」
「好きなら告れば良いのにな」
「好きじゃねーよ」
どの口が言う、と重なる声。
「好きな女には優しくしないとな」
「降谷が好きな女の子にそんな態度するって知らなかったぞ、俺も」
「あ、もしかして自分からちゃんと好きになったのが初めてだとか」
そんなわけあるか、と…遠くで聞こえる声。
「んぅ…うるさい…」
「…降谷、〇〇を部屋まで送れ。まだ消灯時間間に合うだろ?」
わかった、と声に脇を抱えられて無理矢理立たされる。
もう寝たいのに。
立たされた視界の先にベッドが見えて布団が恋しくなる。
「お前ら消灯時間だぞ!」
まだ騒いでるのか、と扉越しに声がしたかと思えば、恋しかったベッドの中。
…柔らかい匂い。
その匂いと温かい温もりに抱きついて。
「しー…」
目の前にあるのは、…降谷くんの顔。
「…しー?」
「っ…そう、シー…」
指に手を当てられて…初めて見る降谷くんの照れ笑いのような優しい顔。
頭から布団をかぶって、少し息苦しい。
「…………無防備過ぎるだろ」
小さな声で囁く声。
恥ずかしい気持ちと、初めて聞く優しい声音が嬉しい。
「…俺が好きって言ったら……どんな顔する?」
〇〇、と…優しい声が眠気を誘う。
「寮長行ったけど、外に出るのは今やめといた方が……って何したんだ降谷」
「抱きついてるのはこいつだ」
「うー…るさい…」
「……寝かせとくか」
「降谷、間違っても手を出すなよ」
「朝起きたら〇〇のハジメテ奪われてるとかやめろよ」
「あ、起きた時に騒がないようなんとかしろよ」
「何もするわけないだろっ」
周りの声が、そのうち静かになって…視界が少し明るかったのが暗くなる。
温かいそれに抱きつけば、抱きしめ返されて。
何かわからないけれど、その温もりが好きになった。
その温もりがこれから先の人生。
手放せないものになることは…このとき知らなかったけれど。
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