第7章 アンケ夢/降谷零【警察学校時代】
あいつは?とベッドで眠るヒロくんのことを指してるのが分かって緊張する。寝てますよ、と答える降谷くんの声。
ヒロくんが私を抱きしめる手に僅かに力が入ったのがわかる。
次うるさくしたら処罰だからなと言われて部屋がしまった音がする。布団をめくられたのと、ヒロくんが起き上がるのはほぼ同時だった。
「〇〇、大丈夫か?」
「っ、…ヒロっ!」
「不可抗力だ、ゼロがうるさくしてたからだろ」
何もしてない、と両手をあげるヒロくんに迫る降谷くん。
「降谷、やりすぎたのは俺たちだから景光は悪くないって」
「それに、何もされてないよな?〇〇」
質問を向けられてるのにそれどころじゃなく顔に集まる熱と、うるさい心臓の音を沈めるのが忙しい私に部屋の中に沈黙が走る。
「本当に何もされてないよな?」
伊達さんの大きな手が、私の頭を撫でるから…それに少しだけ気持ちが落ち着いて。
「めっちゃドキドキしたぁ…っ、見つかるかと思った」
でも少し楽しかったと正直に告げれば部屋の中で大きく息を吐く複数の音。
「ややこしい」
「一瞬本気で景光が手を出したかと」
「してないって言っただろ!」
伊達さんが私に、安堵の笑みを浮かべるから首を傾げた。
「何かあったの?」
「〇〇は知らなくて良い」
まだな、と笑われて付け加えられた言葉。
うるさくするな、と伊達さんの言葉でとりあえず落ち着いた4人が……なんだか、歳に似合わないくらい若く見えた。
「降谷、さっき何か作っただろ?」
「酒あるぞ」
「〇〇は普段何飲むんだ?」
「私?…普段あんまり飲まないけど、だいたい飲める。お酒の味は好き」
「…好きなのは?」
降谷くんから質問を投げかけられるとは思っておらず…
「好きなのは……甘いやつ」
「ガキ」
「っ…降谷くんやっぱ嫌いっ」
私たちのやりとりにまぁまぁと宥める4人にそっぽを向いていれば、頬に当てられる冷たい缶。
「ひゃっ…!?」
「……ふっ、…ひゃって…」
本当に言うものかよ、と楽しそうに笑う降谷くん。
…さっきの気味が悪い笑顔じゃなくて、…その笑顔に目を背けて、缶を受け取った。
「〇〇、ほら」
「降谷めっちゃ料理上手いから食べてみろよ」
簡易テーブルに広がられた降谷くんが作った料理。
タッパに詰められたものが次々と並んでいく。
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