第7章 アンケ夢/降谷零【警察学校時代】
「…あんまり、人と仲良くなるの得意じゃないから。女の子って特別、近くいたいっていう子もいるし。そういうのは苦手」
「俺たちは?」
「…別、かなぁ。ヒロくんもいるし…それになんか、一緒に組むことが多いから、気疲れしないというか。降谷くんは苦手だけど」
「降谷は、なぁ?」
「そうだな」
クスクス笑う松田さんと萩原さんにどうして笑われているのかわからなかったけど、楽しそうな二人は見ていて気分が良かった。
「ただいま」
「おっ、やっと戻ってきた」
髪を濡らしたまま戻ってくる伊達さん、ヒロくん…それに、降谷くん。
「みんな髪くらい乾かしなよ、風邪ひくよ」
「そんな柔じゃないけど…あ、そうだ。〇〇が乾かしてくれよ」
それならいいだろ、とニッと子犬のような笑みを浮かべて私にドライヤーを渡してくる萩原さんの笑顔がうつる。
「…仕方ないなぁ、大人しくしててね」
ドライヤーをコンセントに差し、萩原さんの濡れた髪に触れたら突然奪われるドライヤー。
「俺がしてやるよ」
降谷くんの…気味が悪いくらい満面の笑顔。
「いやいや、降谷!大丈夫、自分でする!!」
「して欲しかったんだろ?」
頭を掴まれて押さえつけられる萩原さんと、そこにドライヤーを当てる降谷くんの姿に私たちは笑ってしまう。
「松田がやれって!」
「お前がじゃんけん負けたんだろ!…いやいや、降谷落ち着け、ちょっと遊んだだけだ!」
私たちは笑いが、堪えられなくて。
部屋で三人が走り回って落ち着けと宥める伊達さんに、避難するようにヒロくんの隣にいた私。
流石に騒ぎすぎたのか、ノックと同時にドアが開いた。
「お前らいい加減にしろ!」
ヒロくんに引かれ私が慌ててベッドの中で抱きしめられながら隠される。
…ヒロくんの、心臓の音が…うるさい。
「すみません、寮長。すぐに静かにさせますんで」
堅いの大きな伊達さんが入り口に立ち、部屋の中の視界を少しでも遮る。
…バレると処罰が与えられるのは当然で。それを想像すると怖くてヒロくんの服を握る。
お風呂上がりの匂いに、どこか安心する気持ちとそれ以上に色んな意味でドキドキして私の心臓がうるさい。
…ヒロくんにもきっと伝わってるだろう。
それが、なにより恥ずかしい。
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