第3章 恋の思い出/景光【思い付き突発番外編】
それ以降、試合会場では彼女を探すようになった。
…自意識過剰だったかもしれないけれど、彼女から声をかけてくれることも多くなって。
お互い、警察を目指していることを知った。
大学は違ったけれど、交流試合も多くなって、前よりも関わることが多くなった。
連絡先を交換したのは、サークルの交流親睦会だったと思う。
たまたま、剣道のサークルに俺と同じ苗字の人がいるから名前で呼んでいいかと確認してきたのは彼女。
それなら、と俺も彼女を名前で呼ぶようになった。
…後にそれが嘘だと気づいたのは、降谷の恋人になってからだったけど。
入校式。
サークルを抜けてから連絡はとりあってお互いの試験の応援をしたり、会うことはなかったけれどたまに電話をした。
好きだな、と思ったのは電話して声をきいた時だったと思う。
疲れちゃったから声が聴きたくなってと眠そうな声でかけられてきて。
…あの時は、お互い好きだと思ってた。
いや、多分好きだったんだと思う。
次に会ったら。
次に会えたら。
そんな風に先延ばしにして
「ヒロくん!」
「〇〇、久しぶり。本当に入校できたんだな」
「できたってなに、その言い方!」
制服や剣道着…交流会でのちょっとした私服でしか会ったことがなくて。
まだまだ着慣れないスーツは馬子にも衣装だとお互いに笑いあって。
「おい、早く行かないと受付混み合うぞ」
「悪い、ゼロ」
先を歩いていた降谷が、俺に隠れる〇〇に気づいて。
「……誰だ、そのちっこいの」
降谷が初対面の人にあくまで初対面には愛想笑いが得意なこいつが。
「紹介する。…高校の部活で仲良くなってな」
「…お前のタイプってこんなのなんだな」
“こんな”という降谷に、なんだか笑ってしまって。
「ヒロくんなんなのこの人!」
〇〇も初対面には人見知りするくせに。
…降谷が先を歩く横顔に感じた違和感。
ああ、こいつらお互いを好きになるなって。
どうしてだろうか。
あのとき、そう思ったんだ。
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