第21章 アンケ夢/幸運助兵衛
「…零とヒロくん、喧嘩してるの?」
「誰かさんが原因でな」
「頼むから今日中に解決してくれ。同部屋の俺たちが気まずい」
「でも萩原さんと松田さんの喧嘩だってしょっちゅうだよね?」
「降谷と諸伏のは滅多にない上にほぼ冷戦だから気まずさが違う」
同じじゃないの?という気持ちで返せば、いつも間に挟まれている伊達さんが腕を組みながら難しい顔をしていた。
私だって二人に喧嘩してほしいわけじゃない。
昼食を食べるときも、6人で座りながら零とヒロくんは私を挟んで空気が悪いせいで料理の味が分からなかった。
「零、ヒロくん、帰り道どっか寄らない?」
夕方、逃げたくなる私の背中を押したのは伊達さんで。
逃げ道を塞ぐように立ち塞がるのは松田さんと萩原さん。
逃げ出したくなる気持ちに逃げ道はなく、勇気を振り絞って二人に声をかけた。
「いいよ?どこ行こうか」
なのに。
なのに、だ。
「ヒロが行くなら行かない」、なんて子供染みたことを言ったのは零で。
それにムキになって「それならゼロはこなくていい」なんて言ったのはヒロくんで。
…その時の二人が、どうしても小学生のように見えてしまったなんて言える空気ではなかった。
今、私はヒロくんと二人でショッピングモールに来てしまった。
わざとらしく楽しそうに笑っているヒロくんが作り笑いなことくらい私にもわかる。
正直に言おう。
なんでどうしてこうなった。
私が一番、頭を抱えそうだった。
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