第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「好きな物は最後に食べたい派なので」
含めて言えば、今度は零が頬を赤らめた。少しだけ勝った、と気持ちになりながらお酒を飲む。…甘いシャンパンの炭酸が口の中ではじける感覚が楽しくさせた。
デザートのケーキが見た目も可愛くて、美味しくて。幸せに浸っていれば、零は今度こういうのを作りたいと言い出す始末。
相変わらずの零に、満たされる気持ち。
部屋に戻れば浴室に真っ直ぐに向かい浴槽にお湯を張る零。
逃がさないとでも言うようなその瞳に小さく頷いた。
部屋に置いてあった小さなキャリーケースは私のじゃなくて、ルームメイトのものだった。
ちょうどいいサイズがなかったんだろうとそのケースを広げて、……ばたんっ、と閉じた。
「どうした?」
零の言葉に首を振って苦笑い。
見間違いかと思う。
見間違いであってほしい。
ゆっくりをもう一度キャリーケースを広げれば…
「なんだよ、これ」
着替えだと思った。信じてた。
裏切られた。
「…こういうの、〇〇好きなのか?」
「っ!誤解です!!」
キャリーケースに入っていたのは、サンタコスチューム。
赤と白。
広げるのが怖い。
手を伸ばしたくない。
翌日の着替えも、ニットのワンピースに薄手のタイツ。
普通に寒い。というか、そのワンピース着るときは寒いからといつもパンツだってみんな知ってるのに、それ一枚。
…ハメられた、そう思った。
「お風呂上りに、着て見せて」
「…やだ」
「本当に今日はいやいやっ子だな?」
子ども扱いするような零の口調に頬を膨らませたくなる。
「逃がさないけど」
にっ、と笑うその目は獲物を捕らえた顔。
…その夜、お風呂でもお風呂上りにも、零をたくさん感じて。
たぶん、付き合ってから初めて朝を迎えるまで抱き合ったと思う。
その時のことを思い出すのは今でも恥ずかしいのは、本当に幸せだったから。
また来年も一緒に、
その約束が叶うことはなかったけど。
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