第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
手首あたりで止まるコート。
私を見る零の目に、熱がこもっていて…唇がまた、重なる。
言葉数が少なくて…なんだか、昼間なのに、夜みたいな…変な、気分。
「あいつらに、何かされた?」
「え…?」
「さっき、企んでそうな雰囲気だったから」
そんな空気に耐え切れない私の気持ちを汲んでくれるかのように、零が髪に口づけて。
「…ううん、みんな…私に頑張れって言ってくれてたの」
零の肩に額を預けてゆっくりと話す。
「零、あのね」
ホテルのことを、言わないといけない。
言いたい。
言わないと。
そう思うのに…顔をあげて目が合う零の目が、優しくて…甘くて、言葉が奪われた。
「ねぇ…零、今日なんか…零のその目、困る…」
困る。
優しすぎて。甘すぎて。
まるで、特別扱いされているみたいで。
学校の時は、ぶつかったりするのに。
この恋人の時間だけは…こんなに甘く。甘くて。
「どういう風に困る?」
「…っ、零…」
「なぁ、こっち見て」
見ろって、と囁かれて…命令されるような声音に心が締め付けられる。
「愛してる」
こんなの、心臓に悪い。
全力で回したティーカップより、死ぬかと思ったジェットコースターより…お化け屋敷よりも。
零のこの目が、私の心臓を止めそうだなんて誰にも理解されたくない。
何度目かの触れるだけの口づけをすれば、それが観覧車の天辺だと分かった。
狙ってしたのだと分かるのは、零のしたり顔。
「…ねぇ、零」
何度、今日こんな風に零を呼んだだろうか。
ん?と返されるのも、何度目かわからない。
「今夜…空いてますか?」
こんなに明るいのに、夜の誘いなんてはしたない。
…あぁ、私…卑しいなって思った。泊まるだけでは終わらないことを知ってる。期待してる。だから、恥ずかしかったんだ。
「…俺も今日誘いたかった」
あいつらいたから迷っていたのだと言われて…笑ってしまう。
「その、あいつらさんから…クリスマスプレゼント」
鞄を開けて、財布の中からカードキーを取り出して、零の掌に。
「お化け屋敷に、零が連れられて…その時に」
「…あぁ、そういうこと」
強引だった理由と繋がれば、零が納得して。
「してやられたな」
無邪気な笑顔を、向けられた。
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