第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「〇〇」
ヒロくんの声が重なる。
「〇〇」
「〇〇」
「〇〇」
伊達さんが、松田さんが、萩原さんが、私の名前を呼ぶ。
頑張れ。
逃げるな。
名前を呼ばれるだけで、背中を押されてる気持ちになる。
「…零」
「ん?」
「二人で、観覧車に乗りたい」
恥ずかしさに顔を上げられない私の額にそっとキスをされた。
「ああ、行こう」
頑張ったな、と褒めるように頭を抱きしめられて零の服を掴む。
「みんなに、渡したいのは本当だからっ」
零の胸板を押して離れて、甘い空気に感情がキャパオーバーを起こしている。
はいっ、と押し付けるように三人にラッピング袋を押し付けて。
「あのっ…ありがとう、…みんなのこと、大好きだよ」
こんな風に、誰かにプレゼントしてもらったのも。
こんな風に、誰かに応援してもらえるのも。
こんな風に、友達を愛おしいと思えるのも。
今年が、初めてで。
「行こう、〇〇」
好きな人と、両想いになって。
付き合って。
こんな風に、優しい目を向けてもらえるのもすべてが初めてで。
そんな私には色々まだ、難易度が高いことばかりだけど…
「あまり〇〇で遊ぶなよ。俺だけが、意地悪していいんだから」
私の態度に、みんなに何かされたのだと思ったんだと思う。そんな牽制をする零の言葉に恥ずかしくなり腕に強く抱き着けば抱き寄せられながらゆっくりと歩いた。
言葉は交わさなくて、顔を合わせることもできずにいた。
観覧車はタイミングよく空いていて、乗り込むことができれば向かい合うように、ではなく隣に座る零。沈黙が、羞恥心を煽る。
1/4ほど登ったタイミング。地上からもある程度距離があって、地上が遠くなったなと外を覗こうとして…零がキスをしてきた。
無言だった。
お互いの息継ぎする音だけが耳元に響く。
唇を重ねるだけだったその行為は、そっと唇を割り開くように舌が下唇をノックする。
恥ずかしくて嫌だと、胸板を少し強めに押して唇を離せば零が物足りなそうな表情をしている…から、恥ずかしい。
「…今日、特別可愛い」
服装も、と言われてマフラーが解かれる。零がコートを脱がしてくるから、肩が冷たい空気に晒された。
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