第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「みんなは?」
「…あ、零を拉致ってお化け屋敷」
「拉致られたか」
「拉致られてた」
そうか、とクスクス笑うヒロくんの空気が柔らかくなって緊張感が解ける。…さっきの空気は、気のせいだったんだろうなと。
「一緒に行かなくて良かったの?」
「私は休憩中」
そっか、と言いながらどこか遠くを見る目。
「ヒロくん、つまらない?」
「え?」
「…戻ってきてから、ずっとぼんやりしてるから」
くしゃくしゃ、と頭を撫でられた。あぁ、私…ヒロくんにこうされるの、すごく好きだって思って。
「これ、いつ渡そうか考えてたとこだった」
渡されたのは…日付が印刷されたなにかの厚いカード。
「ホテルのカードキーだよ」
そこの、と指差されたのは遊園地の横にあるリゾートホテル。
「俺たちが邪魔をするのはランチまで。食べ終わったら観覧車に行って、それからは二人で楽しんで」
「えっ、でも」
「着替えは〇〇のルームメイトに用意してもらって、部屋に置いてるよ」
待って。待って。
「俺たちから、二人へのクリスマスプレゼント」
「っ…待って」
大したもの、用意してない。
嬉しさよりも、先にそれを考えてしまってプレゼントを仕舞う鞄を強く握った。
「降谷へは、〇〇から渡して」
「みんなからなら、みんなで」
「あいつは、〇〇から渡された方が嬉しいから」
どうしよう。
明らかにここのホテル、高い。
しかもクリスマス。
返品なんてできないのは分かってるけど…本当に、私が受け取って良いのか分からない。
「あー、タイミング間違った?やっぱり」
あいつらいなくなったから今かと思ったんだけど、と頬を掻くヒロくんが私の手を掴んで立ち上がる。
「俺たちはさ、二人といるのが好きなんだ。二人が幸せなのが、好きなんだ」
だからこれは俺たちが好きでやったことだと。
空になったカップを取られ、腕を引かれて連れて行かれたのはメリーゴーランドの前。
「そんな顔しないで、素直に喜んで受け取ってくれないと困る」
「……私、みんなに」
強く握っていた鞄を取られた。持ち物検査のように鞄を開かれて、慌てて取り返そうとしたけど、時すでに遅し。
「これ、俺たちに?」
同じラッピング袋が6つ。リボンだけが色違い。
確かめなくても明らかなそれに、ヒロくんは満面の笑みを向けてきた。
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