第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「並んでますねー」
「並んでるな」
寒いなぁ、と手袋をつけなかったことを後悔した。…正直、零と手を繋ぎやすいようにだったんだけど。
「やる」
はい、と伊達さんから渡されたのはホッカイロ。
「寒いだろ?降谷と違って手を繋ぐわけにはいかないからな」
手を繋ぐ。伊達さんと。
それをふと想像して、零はそれに妬くとは思えなかった。
「伊達さんは、寒くない?」
「大丈夫だ、お前より鍛えてるからな」
「私だって鍛えてますー!」
なに話してんの、と背後から顔を近づけてきたのはヒロくんで。
「伊達さんからホッカイロ貰った」
「悪いな、うちの子が」
「いやいや、おかしい」
最近ヒロくんの保護者度が増した気がする。
手袋貸そうか?なんて、聞かれれば慌てて首を振った。その後ろにいる零からの視線が怖いし。
「あ、終わったらメリーゴーランド乗りたい」
「それは降谷と、是非」
「えー、みんなは?」
「大の男5人揃ってメリーゴーランドはやばいだろ」
なんか乗りたくなるんだよねぇ、と言えば伊達さんは苦笑いだし。…大の男5人揃ってるメリーゴーランドも楽しいと思うけど。
「だめ?」
「…そういうおねだりの仕方は、彼氏だけにしてください」
「諸伏は本当、弱いよな、〇〇の我儘に」
いいよ、なんて渋々付け加えられて。
「ねー!零、萩原さんと松田さーん!」
「ん?」
「どうした?」
「おう」
周りが賑やかだから、少しだけ声を張る。
「終わったらメリーゴーランド乗りたい!」
「降谷とどうぞー」
「……ガキ」
「今!!松田さんガキって言った!!バカにした!!」
伊達さんに順番だぞ、と引っ張られた。
騒がしい、と付け加えられた言葉に頬を膨らませたくなる。
「伊達さんもメリーゴーランド」
「乗らない」
ほら、と背中を押されるようジェットコースターに乗ったのは最前列。
…そういえば私、ジェットコースターって乗れたんだっけ、なんて今更考え始める。
多分大丈夫、と思いながら安全バーを腰まで下ろされた。
「…伊達さん」
「どうした?」
「手、握っていいですか」
ははっ、と声を上げて笑われた。
ほれ、と手を差し出されてその手をぎゅっと握りしめる。
「怖いのか?」
「…多分」
では行ってらっしゃい、なんてスタッフさんに見送られて…
ジェットコースターは動き出した。
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