第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「暑くないか?コート、脱いでも」
「大丈夫、マフラーはとってるから」
肩がでている服装は、なんだか恥ずかしい。
零に見透かされている気もしたけど大丈夫と言って誤魔化せば、信号待ちで零が優しい表情をして頬を撫でてくるから、期待して目を瞑ってしまう。ぷに、と唇に当てられた親指に唇を押されて目を開けば『が・ま・ん』と音を発さずに唇で伝えてくる。
そんな零が愛おしいと思うなんて…
「おーい、君たち」
「俺たち放ってなにいちゃいちゃしてるんだ?」
「降谷くん俺たちともラブラブしてー」
後ろから少し騒がしい声。その声にミラーを見れば松田さんと萩原さんが楽しそうに笑っていて。
「絶対嫌だ」
「あはは、零は私のだから絶対あげない」
零は私の、そんなことを自然と口にしていたことに気づけば少しだけ照れ臭くて。
「じゃあ、〇〇は俺が幸せにするよ」
「「「「ヒロが言うとシャレに聞こえないからやめろ」」」」
冗談に決まってるのに、そのときだけは私とヒロくん以外の声が重なるから。
「お前ら本気にしすぎ」
「本当だよ」
「そうそう、降谷が〇〇を傷つけないうちは何もしないよ」
何も。
含めるようなことを言うヒロくんを思わず振り返れば、冗談だよって笑われた。
「ヒロくん、揶揄うのやめて」
「ごめんごめん、怒った?」
「怒ってな」
い、を言い切る前。その言葉は零の口の中に吸い込まれた。
唇で塞がれたことに気づくには、一瞬遅れて。舌先が口内に入ってきそうになって、そんなのみんなの前じゃ絶対耐えきれなくて…
パーンッ、と乾いた音がして零の顔が一瞬がくん、と下がった気がした。
「いい加減にしろ」
「痛っ…」
「…松田さん…っ」
車は路肩に停められていた。
雑誌を丸めたもので、零の頭を叩いたのだろう。松田さんの顔を見れば、僅かに目を見開いてすぐにそらされた。
「それ以上その顔後ろに見せたらお仕置き」
私にしか聞こえない声で。
そんなこと言われたら、後ろを見る勇気なんてない。
零は優しいけど、嫉妬を含めた目をしていて…それが、嬉しいと思うなんて恥ずかしい。
「お前らいちゃつくなら場所考えろ」
「いちゃつく予定だったのを邪魔したのは誰だ」
「さぁな?」
後ろではヒロくんを責める声が、響いて。
…私は邪な考えが浮かびそうな頭を冷やそうと外に目を向けた。
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