第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
週末に、一人でプレゼントを買いに出かけた。
ついでにせっかくみんなで過ごせるならと全員お揃いのシンプルなデザインのハンカチにイニシャルを刺繍したものを用意した。
…お揃い、なんて嫌がりそうだなと思いながらそんな顔を見るのも少しだけ楽しみになって。
それぞれ個別の何か、と考えたりもしたけれど、そういうのは誕生日のほうがいいかななんて思ったり。もちろん、零には個別のプレゼントを用意した。…男性の欲しいものがわからなくて、ありきたりだけどマフラーを。
ルームメイトには彼氏と二人きりじゃなくていいのかって言われたけど。
確かに、初めての彼氏だけど…零とは来年も過ごせると思ったから。これからも、ずっと。
…来年も再来年もみんなと一緒でも、楽しいとは思うけど。
「絶対意地悪してきそうだな」
思い浮かべて笑ってしまう。
幸せだった。準備をしている時間も、みんなとその日のスケジュールを確認するときも。
すごく、すごく幸せで。
友達とこうして出かけることも、男友達とこんな風に過ごすのも初めてで。
だからすごくすごく楽しかった。
零も、ヒロくんも、伊達さんも、松田さんも、萩原さんも。
みんながその日を楽しみにしているのが、すごく伝わって。
その日。
クリスマスイブ。
遊園地だからとトップスはニットのオフショルダーに動きやすいように紺のパンツ姿。
…オフショルダーになったのは、ルームメイトに引き止められたせいだけど。
デート、というより今日はみんなで遊ぶのがメインなのになぁなんて思いながらオフショルダーは寒い。堪えきれずにコートを羽織ってマフラーをつけた。
着ぶくれするかなと思いながら寒さには勝てない。
寮の前で待つ5人の姿が窓から見えて足を急がせる。
「車、借りた」
大型ワゴン。
6人乗りのその車。
「大家族」
「末っ子だな、〇〇は」
「誰が末っ子ですか」
「運転は降谷だから」
「助手席座れば?」
…当然のような流れに恥ずかしくなる。邪魔するって言ったり、応援してくれたり。
「降谷、弁当食べていい?」
「昼飯だ!」
「なぁ、降谷、ティッシュどこ?」
絶対ちょっかい出すのを楽しんでるんだろうなっていうやりとりに笑いが止まらない。
運転をする零が、いつか欲しい車があるんだって言って笑う横顔は、いつもより幼く見えた。
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