第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
寮の手前まで零がご機嫌に走るその表情を下から眺めることに慣れつつあるのが、少しだけ怖い。
よし、と足が止まれば下ろされて地面に足が着く。
クリスマス、と念押しするように言われれば頷いて返した。零でも浮かれるんだな、と思えば愛おしい。
離れ際に軽く口づける。部屋に戻って考えるのは零へのクリスマスプレゼント。
だけど。
その数日後。
念押された理由に気づくのは、偶然教室で二人きりになったときの萩原さんとした会話の後だった。
「なぁ」
「ん?」
「ここに、クリスマスの遊園地招待券がペアチケット3組あります」
「6人分?すごい!さすがモテ男!」
招待券、その言葉にすぐ飛びついた。
「ただし、有効日は24日」
「みんな空いてるの?」
「もち、確認済み」
みんなで遊園地なんて、絶対楽しい。
「行くよな?」
「行く」
「よし、言質取った」
突然見せられるボイスレコーダー。
「クリスマス、俺たちと過ごそうな?」
「ッ…あー!!」
「はいはい、苦情は後で降谷と揃って聞いてやるから」
“偶然二人きり”なんて嘘だった。
がらっ、と開けられた扉。松田さん・伊達さん・ヒロくんに抑えられている零は、不満を訴える目で私を見ていた。
「クリスマス、誰がいちゃつかせるか」
「そうそう、せっかく俺たちと過ごせるクリスマスなんだから楽しもうじゃん」
「ごめんな?一応止めたんだけど」
「悪い、暴れる降谷を抑えるので必死だった」
松田さんと萩原さんで企んでるのは二人の顔を見ればわかる。
解放された零が私に近づいて、思い切りデコピンしてきた。
「痛っ…!!」
しかも本気のやつ。
思わず額を抑えて蹲って涙目で見上げれば、珍しく本気で怒ってる。…いや、これは私が悪いけど…痛い。
「…零、ごめん」
ふいっ、とそっぽを向かれれば悲しくなる。
「ゼロ、本気で嫌なら断れるだろ」
「……お前らと過ごすのが嫌なわけあるか」
零も私も、そこに気持ちがあるから…嫌じゃないんだって思えば嬉しくなる。
「うわっ、降谷可愛い」
「素直でよろしい」
「よーし、確定」
…何だろうなぁ、流されてるんだけどその流され方が心地良い。
「私も、みんなと過ごすの楽しみだな」
そう言った私の顔を見て、零がため息をついた後…そうだな、と同意してくれた。
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