第20章 一度きりのクリスマス。【警察学校組/オール+降谷夢】
「今年のクリスマス、さ」
頬を指先で掻きながら、零が口を開く。
「一緒に、過ごさないか?」
みんなで過ごすとばかり思っていたその言葉は、二人きりを指していた。
「うん」
一緒に、と頷けば優しく重なる唇。
零の指が手を繋ぐように絡む。指先まで性感帯になったみたいに、敏感で零の指が掌を指で…
「「ふーるーやーくーん」」
聞き慣れた声が背後から聞こえて零の胸板を押して離れた。
「何公共の場でいちゃついてんだっ!」
「ふっ、ざけんな松田!」
「まつ、ださん…萩原さん…?」
「なにその顔エロい」
どんな顔していたかなんて聞きたくない。松田さんが零を羽交い締めにしていて、萩原さんと目があって一発目の言葉に思わず顔に熱が集まるのが分かって何かに腕を引かれた。
「ハギ、〇〇のこと揶揄うのやめてやって」
「…保護者登場?」
ヒロくんの腕の中。
大きな胸板に顔を隠されれば安心してぎゅっと服を掴んだ。
「お前ら急に走るなっ」
伊達さんの声が聞こえる。
「ヒロ!〇〇を返せ」
「松田とのジャレ合い終わったらな」
掌がまだ熱い。零の指が掌を伝う感覚がまだ残ってる。
「そろそろ門限だし、帰るぞ」
「門限破りの常習犯が言うか?それ」
「俺は〇〇といたいだけ」
返せ、とヒロくんから離れて零の腕の中に抱きしめられる。見上げれば、拗ねた顔をしていて……可愛い。
その表情が可愛くて、少し背伸びをして唇に掠めるキスをした。
「わーお、ラブラブ」
「萩原さん、うるさい」
「ほんと〇〇は趣味悪いよな」
「松田、喧嘩なら買うぞ」
「買ったらだーめ」
松田さんも煽らないで、と繋いだ手の指が、…っ!
「ゼロ」
「降谷」
「…何もしてない」
「〇〇の顔で分かる」
「彼女のそんな顔、俺たちに見られて良いのか?」
そんな顔って…?零を見上げれば、目があって優しく微笑みを向けられて…足が、浮いた。
「きゃっ!?」
「じゃ、俺先に行くから」
「待って零っ!待っ」
舌噛むから黙って、と囁かれて。横抱きされたまま走る零にしがみついた。
「あいつら付き合ってること隠す気あるのか」
「……ないな」
そんな会話は、聞こえてなかった。
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