第1章 初夜/降谷【警察学校時代】※裏
「そろそろ上がるか」
「…もう少し」
もう少し、このままでいたいと言えば仕方ないと嬉しそうに笑う零。
眠気を感じ始めて、零に半強制的に露天風呂から上がらせられて零に至れりつくせりと浴衣まで着せられ布団で抱き合えば、すぐに深い眠りについた。
朝ごはんの用意ができました、と旅館の人の声かけで目覚めた朝。
30分後に持ってきてくださいと零が寝起きの声で伝えて…
「零…おはよう」
「あぁ、おはよう」
「体、大丈夫か?」
零が気遣ってくれて。
「…なんか、気持ち悪い」
腰と下腹部に感じる違和感。
気持ち良かった、…でもなんだろう、…ナカにあることを思い出せるような、その余韻があるような感じ。
「…ふ、…ごめんな」
優しく笑って謝られて。…幸せそうな零の謝罪に、胸が温かくなる。
甘い朝。
…好きな人と迎える朝が、こんなにも愛おしいものだとは思わなかった。
「朝ごはん食べたら、また外巡ろうな」
「…うんっ」
幸せな朝に、顔が緩むのを止めることはできなかった。
「あれ、偶然だな」
「降谷の部屋に置いてた資料見てたら温泉行くかって話になってな」
「あ、流石に日帰りで来たから安心しろ?」
「初夜は無事迎えられたか?」
…旅館の目の前の足湯に、大きな見慣れた男4人。
深い深い溜息と零の満面の怒った笑顔で。
慌てて逃げる4人と、それを本気で追いかける零。
下駄なのによく走れるなぁと。
笑いを堪えることはできなくて。
今日も賑やかだな、と湯畑周辺を走り回る大人5人を…足湯に浸かりながら眺めていた。
帰りの電車。
零と繋いだ手は、みんなにからかわれても離すことはなくて。
「なぁ、昨日ちゃんと」
「お前ら黙ってろ」
昨夜のことは、零は頑なに話さなくて。
それが、なんだか嬉しくて。
「まぁ、〇〇の顔見ればわかるけどな」
「え?」
「よかったな」
くしゃくしゃにみんなからおめでとうと頭を撫でられて。
幸せだなって、思った。
卒業して、離れ離れになっても…このメンバーとは離れないんだろうなって。
その頃はそんなこと、当たり前に思っていて。
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