第17章 水着【降谷/警察学校時代】
たくさんの水着に目を奪われている間に零が少しだけ離れていたらしく戻ってきて私に楽しげに言う。
…いつの間に店員さんに確認をしたのか。
「試着はするけど、見せないよ」
「見ないと分からないと思うけど」
「恥ずかしいって言ってる」
「どうせ見るのに?」
「零は意地悪だ」
ごめんごめん、と笑われて陳列する水着を眺める。
「零は、何色が好き…?」
「ん?…何色だろ、…こういう物なら、〇〇に似合う色が好きだけど」
「…水色って、似合う?」
「似合うと思うよ」
好きな色なの?と訊ねられて
「好きだけど…ほら、零とヒロくんの目の色」
「そこは俺だけにしてほしいな」
「あっ」
「あっ、じゃないな。そうやって無意識にいつもヒロがいるんだから」
少しだけ拗ねた口調で。
…そういうつもりじゃないんだけど、と思いながらも正直嫉妬する気持ちも理解できるから…零の服を掴んで。
「ごめんね…?」
「いいよ、分かってるし。怒ってないよ」
「ほんと?」
「ああ、…それに、そうやって気に掛けてくれるのは嬉しいし」
零が優しく笑うから…安心して頷いた。
「どれが似合うだろうな…いや、何でも似合うと思うけど」
零が水着をいくつか手にして、私の服の上から当てる。
水色、といった私の意見を取り入れて。
青系統。
「…ワンピースも可愛いけど、オフショルダーやフレアも似合うと思うんだけど」
「ふふ、私以上に真剣」
「〇〇のかわいい恰好、独り占めできるから張り切るだろ」
「……そっか」
うん、そっか、と顔が緩むのが分かる。
零が私のために選んでくれて。
零が私のことだけを見てくれる。
「試着してみて」
「…本当に見るの?」
「見ないと分からないし」
お願い、と甘い声で言われたら頷いてしまう私は単純で。
試着室に入って服を脱いでいくのもなぜか緊張する。
水着に着替えて試着室の扉を少しだけ開ければ、零と視線がぶつかって扉を大きく開かれた。
「…っ…可愛い」
思わず出たというような感想に恥ずかしさが勝る。
「…えっとっ…まだいくつかあるから…どれがいいか、選んでほしい、な」
「…わかった」
思わずお互い照れてしまって。
顔が熱い。
他にも持ち込んだ水着に着替えては零に見せて、お互い恥ずかしさだけが募って。
試着室から出たころには、なぜか疲れ切っていた。
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