第16章 水着【安室(降谷)夢】
いや、ブラのホックを外して…床に落とし、水着をつける。
そんな一挙一動に熱い視線が絡んでくる。
「やはり似合いますね、シンプルなデザインも」
「…ちょっ、と…っ」
腰に手を当てられて、その腰を撫でる手付きがやけにイヤらしくて。
「パレオ羽織ってみますか?」
「待って…零、なんか…すごく、ヤらしい手付きする…っ」
「自意識過剰ですよ」
噓だ。
そんなわけがない。
「…久しぶりに水着をつけてる姿見ましたけど、…下着と同じ布面積でもどうして惹かれるんでしょうね」
零が膝をついて、腰元に口づける。
何をしているのか。
ここが試着室で外には人がいて。
チュッ、と音が聞こえて小さな痛み。…強く吸い付かれて痕がついた。
「なに…っ…?」
「いいですね、白い肌に白い水着。…映えるような所有痕」
「は…?え、ちょ」
「全身に付けたら、流石に浮気はしませんよね」
「はい…?」
声が裏返った。
…この人最初からこのつもりだった、それが分かって今更意味のない抵抗だと悟ってしまう。
車の中で行くのをやめないか問われて…断った時の何か企んでいそうな横顔を思い出した。
零を止めることよりも、声を抑えるほうを優先してしまう私もどうかしてると思う。
腹部に顔が近づいて息が当たる。
…下着の上から着ているとしても万が一水着が濡れないか。そんなことを考えてしまって懸命に感じてしまいそうな声と体を押し堪える。
腹部、背中、腰、腕、腿…
普段服を着て隠れているところに、たくさんの痕。
両手でどれだけ口を押えても息が熱くて頭がおかしくなりそうで。
「れい…っ…」
「…梓さんも驚くでしょうね、こんなにたくさん僕に愛された痕がついていたら」
「やだ、…恥ずかし…っ」
最後に、と項に痛みが走るほど強く吸われて
「行くなよ」
…最初から、そう言えばいいのに。
回りくどくて…強引で…嫉妬深くて…そのすべてが、愛おしい。
腰が抜けた私に零が見下ろす。
敵わないなぁ、って。
零のその言葉に、頷いた。
「お客様?いかがでしょうか」
ビクッ、と体が強張った。
見られていたんじゃないか。試着室に監視カメラがあるとこも今では多数あるわけだし…
大丈夫、と耳元で囁かれて零が水着を脱がしてくる。
「あっ、すみません!慣れない水着だったのでちょっと手間取って…、っ…決まったのでもうすぐ出ます!」
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