第16章 水着【安室(降谷)夢】
「…あ、これ好き」
白のパレオに水色のチューブトップのビキニ。
「良いと思いますよ」
「…あ、でもこれも好きかな」
真っ赤なパレオを手に取って見せれば
「僕、赤は嫌いですよ」
「………え、それってまさか赤井さんだから?」
「はい?何か?」
そんな安直な、と思ってまさかと口に出せば図星だったらしく笑ってしまう。
「私嫌いじゃないけどなぁ、赤」
「挑発されてますか?」
「まさか」
からかい口調の私にムスッとした態度の零に笑ってしまう。
「透さんは、どんなのがいい?」
「…そうですね」
「オフショルダーもかわいいと思いますよ、フリルで」
「どうしてそう可愛いものを着せたがるの」
「見たいので」
「ああ、そっか。セクシー系はベルモットさんがいますもんね」
「そちらと比べてしまうと劣りますよね」
いや、まぁそうだけど!そうだけど。
「僕は〇〇がああいう服を着られるなら、僕の目の届く範囲じゃないと安心できないので」
「……透さんとプール行きたいし海行きたいし………でも誰にも見せたくないから、プライベートビーチがいい」
「贅沢ですね」
他にも2・3着手にして試着してきていい?と訊ねれば、頷かれて。
店員さんに案内されて試着室に入り、服を脱いでいたら…人が入ってきて。
「え」
「なにか?」
にっこりとその胡散臭い笑顔。
「なんで入ってきたのっ」
「あまり騒ぐと気づかれちゃいますよ」
「いやいや、出てって…っ!」
「だめですよ。貴女がどんな水着を着るのか、一番最初に見ないと気が済みませんから」
「…………意味わかんない」
そんなこと言われて嬉しいと思う自分に対しても、意味が分からない。
…本当、…思い通り手のひらで遊ばれてる感じ。
服を脱ぎながら、視線が痛い。
隠そうにも、鏡が180度挟まれて…零が真後ろに立ってるから、何も隠せないし。
視線が、恥ずかしい。
「早く脱がないのか?」
「…ずっと見るのは、やめて?」
「嫌です♡」
…なんだ今の語尾のハートマークは。
思い切り楽しんでいる後ろに立つ男と、鏡越しで視線を交わして…
「早く着替えてください」
「っ…わかりまし、た」
弱弱しい声音。
恥ずかしい。
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